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卒業生CATCH! 筒井 香さん

株式会社BorderLeSSのロゴの前に立つ筒井さん

メンタルトレーニングの
正しい知識と手法を全国に

教養学科人間科学専攻 2010年3月卒業
株式会社BorderLeSS 代表取締役兼CEO
スポーツメンタルトレーニング指導士
 筒井 香さん

本学卒業後、奈良女子大学大学院に進学し、修士号?博士号を取得。メンタルトレーニングの正しい知識と手法を広く普及するため「株式会社BorderLeSS」を2020年4月に設立。

メンタルトレーニングとの出会い

 筒井さんがメンタルトレーニングに出会ったのは高校時代とのこと。「入学当初は女子サッカー部を作ろうとしましたが人が集まらず、既存の(男子)サッカー部顧問の先生が『サッカーを愛するための部だから』と入部を認めてくれました。その後、キャプテンや副キャプテンのように、チーム内でメンタルトレーニングの活用をリードしていく役職を選ぶ際、顧問の先生から指名していただいたことをきっかけに、書籍等でメンタルトレーニングの勉強を始め、専門の指導者がいる他校に学びに行くこともありました」

多様な専攻を持つ大教大ならではの学びが“強み”に

インタビューに応じる筒井さん

 大学時代は自専攻で心理学を学びながら、スポーツ専攻の授業を取ったり、大学教員の勉強会に参加したりと、将来に生かせることに意欲的に取り組んでいたと言う筒井さん。「スポーツ心理学の研究者はスポーツ科学をルーツに学んだ先生方が多く、また、メンタルトレーナーと呼ばれる職業に就く方の中には、アスリートだった頃や仕事での経験則に基づいたアプローチをされる方もおられます。そんな中、心理学を基礎から学んだうえでスポーツ科学を学び、その両面からスポーツ心理学を学んで研究活動も経験できたことは、現在のアスリートへのメンタルトレーニングを通じたサポートの実践に生きています。学生時代に『人間とは何か』という根本的な問いから、スポーツにおける心と身体の繋がりまで広く学べたことは、現在のアスリートへのサポートの軸になっており、これは、多様な専攻を持つ大教大ならではの魅力だと思います」

メンタルトレーニングの正しい知識と手法の普及のため起業

講演を行う筒井さん(筒井さん提供)

 奈良女子大学の博士課程でスポーツ心理学を研究していた筒井さんは、大学教員の道を選ぶか、起業の道を選ぶか考えたと言います。「大学の教壇に立つことも魅力的に感じていましたが、当時、大学機関でのスポーツ心理学の研究は発展し、少しずつメンタルトレーニングが知られ始めている一方で、まだまだ現場には正しい知識や手法が普及していないことも感じていました。また、前段の通り、大学機関で専門的にスポーツ心理学を学び、学位を修めていなくても、経験則に基づいたアプローチを行う方々によるメンタルトレーニングの会社も増えていることに、ある種の危機感を覚えていました。コミュニケーションを取るうえで、心には誰もが触れているからこそ、心は『誰にでも扱える』と思われがちですが、目に見えないものなのでリスクも大きい領域だと思います。見えない心も学術的に学んだからこそ見えるものがあると確信していたので、学術的な根拠を持ってメンタルトレーニングを行う重要性を、大学とは違う形で発信していく使命を感じ、起業の道を選びました」

筒井さんが設立した会社「株式会社BorderLeSS」は、スポーツ心理学を土台に、パフォーマンスを向上させたいアスリートや指導者、教員、医師、ビジネスパーソンなどへのメンタルトレーニングと、アスリートのキャリアデザインの2つの事業を中心に展開しています。

ラジオ体操のようにメンタルトレーニングを普及したい

 「ラジオ体操のようにメンタルトレーニングを」というテーマのもと、メンタルトレーニングを全国に、そして幅広い世代に普及させることを一生涯かけての目標にしている、と筒井さんは熱く語ります。「身体と一緒で、心も常に使っているので、心の充電が大切です。でも、その充電のことを『心が弱いから必要』と捉える方もいます。じゃあ毎日スマホを充電するのは?毎日ご飯を食べるのは?弱いからじゃないですよね。心の充電はアスリートに限らず、働く人や子どもたちにも必要で、ラジオ体操のように全国各地、幅広い年代で当然のようにできるようにしていきたい。それがメンタルトレーニングの土台になると考えています」

学校教育にもメンタルトレーニングの観点を

 「特に子どもたちに対しては、『感情の教育』を行う機会が少ないと感じています。自分の感情を知ったり、感情の伝え方を知ったりすることで、コミュニケーションは円滑になります。自分の感情を言語化すると行動も変わる、それはアスリートのパフォーマンスにも当てはまります。そういった感情の教育に子どもの頃から触れることで、メンタルトレーニングの導入がスムーズになると考えています」
 しかし筒井さんは、理想としているメンタルトレーニングの普及には、自分たちだけでは限界がある、とも言います。「自社の力だけでは難しいので、学校の先生や教員志望の学生に対して、感情や思考といったメンタルについて学ぶことの重要性を伝え、学校現場と協力しながら、子どもたちをはじめとした多くの人々にメンタルトレーニングを普及していきたいです」と話す筒井さんの目には、熱い決意が窺えました。


(2022年8月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。

筒井さんの記事が掲載されている「統合報告書2022」はこちら

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