卒業生CATCH! 吉田 昂平 さん
皆が温かいこの町で
教員養成課程 英語教育専攻 2015年3月卒
京都府宇治田原町立田原小学校教諭
吉田 昂平さん
必威体育から宇治田原町まで一時間半,車を降りた途端,茶葉の香りが鼻孔をくすぐりました。周りを山と茶畑に囲まれた田原小学校は,校舎も懐かしさ薫る木造り。「3-2」の室名札がある教室から,吉田昂平教諭の元気な声が聞こえてきました。今は外国語活動の時間。吉田教諭が中心となり,ALT(外国語指導助手)とともに授業を展開しています。train,bus,shipなど,身近な乗り物の英単語とイラストが書かれたカードでのかるた競争に,教室中から歓声が上がっています。
本学在学時に,オーストラリアのグリフィス大学で,2か月間の語学研修を経験したことで,小学生の英語教育に関心をもったという吉田教諭。「言語,人種,価値観,すべてが日本と違うことが新鮮で,鳥肌が立ちました。英語を修得することで,将来の可能性は無限に広がります。小学校なら学級担任として一日中一緒に過ごせますから,時間をかけて英語と英語の持つ力を子どもたちに伝えたい」と語ります。子どもたちにもその熱意は伝わっているようで,「ALTの先生と話すために,『先生は牛乳好き?はDo you like milk?でいいの?』と尋ねてくる子もいて,少しでも英語を使って仲良くなりたいという姿がいじらしくてかわいいです」と笑顔がこぼれます。
今年の4月に新任教員として同校に着任してから半年がたちます。担任発表の際には,見知らぬ若い先生への戸惑いが見られたという子どもたちとも信頼関係を構築できています。ただ,幼く元気な反面,授業中でも,どこからともなく喧嘩が始まることも。学校という社会の場に適応させるため,「静かに,速やかに」と授業前から根気強く,掲示して復唱させるなどして丁寧に説いてきました。そんな姿勢が子どもたちにも伝わったのか,「乱暴な言葉遣いをする子に『そんなん言ったらあかんやろ』という声が上がるようになり,子どもたち自身で仲間をいさめる流れができているようです」と成長を感じています。ただ,「それが呼び水となって新たな喧嘩が勃発することもあるのですが」
授業面では,1学期は子どもたちを引きつけるために導入部分を意識した結果,食いつきよくすることに成功しました。しかし,「導入部分を工夫しても,本題に入ると熱が冷めてしまう。引き付けた注目をいかに維持するかが今の課題です。グループで答えを考えさせたり,ノートを隣同士で交換して丸付けをさせたりと,子どもたちがアクションを起こす取り組みを試行錯誤しているのが現状です」と語ります。
教室での悪戦苦闘を切々と語る吉田教諭ですが,休み時間になれば完全無欠のスーパーティーチャーに早変わり。子どもたちとの遊びはいつでも全力勝負で,校庭を1周するかけっこでは,半周差をつけてのぶっちぎりでゴール。「子どもたちからは『速すぎる!』『先生大人げないぞ』とブーイングを浴びますが,やはり教師として威厳を見せないと」と笑います。「一緒に遊ぶことで子どもたちとの距離も縮まるし,子ども同士の関係も見えてきますから」とその重要性を語ります。
その遊びの時間をとれないことが目下の悩み。「丸付けや名簿の整理,行事の準備など,学生のときには見えなかった事務作業に日々追われています。あらためて,世の先生たちはすごいなと感じます」
そんな吉田教諭を支えるのが,同僚や地域の人々の存在です。「校長先生をはじめとした先生方が,自身の経験談を語ってくれたり,教材を提供してくれたりと,いつも気にかけてくれてありがたいです。それに,保護者による紙芝居の読み聞かせ体験や,地域の農家による茶摘み体験など,宇治田原町は町ぐるみで学校を支え,応援してくれる。本当に温かい町です」
そして何よりも,子どもたちの笑顔が活力源。「まだ仕事の要領がつかみきれずに大変なこともあるけれど,やめたいと思ったことは一度もありません。毎日,子どもたちの成長に出会え,1日として同じ日は来ないのですから。ああ,もっともっと子どもたちと遊びたい!」
(2015年9月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。