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附属池田小学校事件から14年目を迎えて

附属池田小学校事件から14年目を迎えて

 8名の児童が亡くなり13名の児童と2名の教員が負傷したあの痛ましい事件から14年目を迎えました。附属池田小学校では、事件を体験した最後の学年である当時の1年生が平成19年春に卒業し、事件当時在籍した全ての児童が学校を巣立ちました。また、事件当時在職した教員も、毎春の人事異動によって公立学校等に移り、この春には事件当時在職した教員は、2名になりました。一方、大阪教育大学においても、事件後に附属池田小学校児童の被害回復や授業再開にボランティアとして参加した多数の学生達は、すでに本学を去り、教職員も事件後に赴任した者が年々多くなってきました。14年の歳月がもたらしたこのような変化の中で、これからも事件を風化させることなく、事件の教訓を語り伝えていくことが大きな課題となっています。

 わが国の学校安全や子どもたちの安全を巡る状況は、その後も益々深刻さを増し、今もなお幼児や児童の安全を脅かす深刻な事件が相次いでおります。本学が、これからも附属池田小学校事件を過去のものとせず、事件の教訓を広く社会に伝え、ますます深刻化するわが国の学校安全と子どもたちの安全確保の課題に、事件を体験した当事者としての役割を果たし続けていくためには、まず本学と本学附属学校園の全教職員と学生が、附属池田小学校事件がどのような事件であったのかを知り、事件の教訓をもとに、学校における子どもたちの安全確保の重要性と教師に託される重い使命について、認識を深める地道な取組みを進めていくことが不可欠であります。

 このような自覚に立って、本年度も「学校安全の日」の事業は、6月5日(金)に大学の3限目(第二部は2限目)の全授業(約100科目)で、教員と学生が附属池田小学校事件を語り伝える機会を実施することとしました。これは事件から5年目を迎えた平成18年6月8日から取り組んできた事件を語り伝える事業の一つです。また、6月8日(月)に国旗を半旗として弔意をあらわすことを昨年度に引き続き実施します。

 第二期中期目標?中期計画において大学の基本目標の一つに「学校安全に取り組む先進的大学として、学校安全に関する研究と実践を追求し、その成果を社会に広める。」と掲げるとともに、大阪教育大学附属池田小学校が、平成22年3月5日にWHO(世界保健機関)が推進している International Safe School(「学校の安全を推進するために、子どもたち、教職員、保護者さらに地域の人々が一体となって、継続的?組織的な取組が展開されている学校」として認める制度)に日本で初めて認証を受け、平成25年3月5日に再認証されました。

 また、本学学校危機メンタルサポートセンターでは、平成24年4月14日にWHO協働センターの承認を得て、「日本International Safe School(ISS)認証センター」を開設し、同センターが世界各地で推進するISS活動の日本における普及に取り組んでまいりました。さらに附属池田中学校では、附属池田小学校及び日本ISS認証センターと連携をはかり学校安全の取り組みを体系的に推進していることが評価され、平成26年10月10日に日本の中学校では初めてISSの認証を受けました。

 これらISSの普及に関わる経験を基に、本学学校危機メンタルサポートセンターでは、平成27年3月6日に開催したフォーラムにおいて、新たにわが国独自の学校安全の推進を目的とした「セーフティプロモーションスクール」の認証制度の創設を発表し、わが国の学校園におけるさらなる安全推進のための支援活動を開始したところです。

 これまでにも大阪教育大学では、事件で亡くなった8名の児童のご家族の皆さんと交わした合意書、さらには負傷児童並びにその保護者の皆さんと交わした合意書に基づき、全教職員の危機対応能力の向上、安全意識の高い教員の育成や学校安全?安全教育に関する研究など、全学を挙げて再発防止策への取組を続けてきました。

 本学では、これからも亡くなった8名の児童のご家族の皆様をはじめ事件被害者の皆様との絆を大切にしていきたいと考えています。また、被害児童の成長を、これからも見守りながら、事件が残した課題に立ち向かっていきたいと考えています。あのような悲惨な出来事を二度と繰り返すことのないように、これからも着実な取組を進め、その成果を学校関係者や教育界をはじめ、広く社会に発信していく所存でありますので、各方面の皆様の変わらぬご理解とご支援を切にお願いいたします。

 平成27年5月25日
大阪教育大必威体育 栗林 澄夫

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