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卒業生CATCH! 川村 幸久 さん

撮影に応じる川村さん

教育現場から教育行政へ 大学の研究をもっと現場へ

小学校教員養成課程 保健専攻 2003年3月卒
大阪市教育委員会 教育活動支援担当(学力向上)指導主事
川村 幸久さん

 4月から教育委員会に着任されたばかり、小走りで大阪市役所のロビーに現れたのは今回の主役の川村幸久氏。「大阪教育大学の学部生だった頃は、卒業後、先生になる事しか考えていませんでした。母校の大学院に戻ることも、教育委員会で働くというキャリアも描いたことがなかったので、人生というのはわからないものです」と、飄々と、でも親しみやすい笑顔で話し始められました。
 「卒業後、小学校教諭として15年間、目の前の子どもたちとの日々に全力で取り組みました。大学院で学ぶことになったきっかけは、長く体育の授業の研究部に所属していたこともあり、当時の校長先生からその分野を専門的に高めないかと勧められたことでした。大阪市教員研修制度で大学院に戻り、今年3月に修了。あわせて教頭?指導主事試験に合格、卒業式の翌週に今回の異動通知をいただきました。学校現場に戻るのではなく、教育委員会で働くことになったわけです」。現在の部署は、指導部 教育活動支援担当。大阪市の子どもたちの学力向上のための支援事業を行うとともに様々なデータを分析して各小中学校へ改善案を提案するなど、まさに大阪の教育改革の重要な部分を担う部門。「今の仕事は、学校の授業支援等をしていただいている学びサポーター等の配置や、理科授業を良くするための理科補助員の調整などがメイン。ひとつの学校から、今は大阪市全体という大きな視野で教育行政に関わっているということになりますね」。

インタビューに応じる川村さん1

 大学院での2年間について伺うと、「体育の授業構築を理論的に学ぶとともに、学校回りや、学会発表にも沢山参加しました。また、論文ではどのような問題意識から根拠となるデータをどう取るかなど、エビデンスの観点の必要性を改めて実感しました。何といっても一番の感動は、今まで現場で実践してきたことが理論に落とし込まれていくことでした。例えばなぜ倒立はこう指導する必要があるのかなど体育の授業で意識してきたことがピタリと研究者の理論にあてはまる。こういう理論があるから正しいのだと指導に確信をもち、理論と根拠の存在を意識して教える意義が今さらながら本当に身に染みました。

 現場で実践を経験したのち大学院での学ぶことはそういう面で非常に価値あるものでした」。ほかにも台湾実習、科研費申請、原稿執筆など、さまざまな活動に精力的に挑戦したといいます。「2年間、大学院生という立場と環境だからできること、教師に戻った時に活きると思うことは全部やるつもりで取り組みました」。
「卒業生の立場から言うと、後輩たちにも、今しかできないことにチャレンジしてほしいです。現場の教員や行政の立場で言うと、大学には今後もよい先生になる学生を沢山育ててほしい。採用試験を突破するための勉強ではなく、今まで通り学校教育をしっかりと支えていける教育者に育つための学びです。あと、今、担当している「『主体的?対話的で深い学び』の推進プロジェクト事業」、この事業は現場の先生が大学の先生から授業改善のための助言をいただくものなのですが、ここにはすでに箱﨑雄子教授と井上功一准教授に指導助言をお願いしています。このように大学の先生方と協働して教育行政に活かすリレーションシップも大学院で築くことができました。先生方には素晴らしい研究を更に深めていただくともに、ご活躍をわれわれ行政が教育現場に還元できるよう積極的に発信してほしい。」と本学への期待をこめました。

インタビューに応じる川村さん2

 「現場の教員から教育行政へ、常に目の前のことに全力で向き合い、縁のある全てから学ぶという気概で来ました。いずれ校長先生にという最終目的もありますが、その過程も流れとご縁に任せてと思っています。休みの日は、息子が3歳なのでこれまた全力で向き合って一緒に過ごしています」と。最後にアットホームな一面も伺いつつ、また急いで仕事へ戻られる背中に、更なるご活躍をうかがわせる頼もしさを感じました。

(2019年4月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。

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